犬の脾臓摘出術|手術が必要なケースについて獣医師が解説

テディベアカットのトイプードル

犬の脾臓摘出術|手術が必要なケースについて獣医師が解説

犬の脾臓摘出術は動物病院では実施することが多い手術です。
脾臓をまるごと全て摘出する手術であり、主に脾臓に腫瘍が出来ているときに行います。
「脾臓を全部摘出して問題ないの?」
と思われるかもしれませんが、術後は特に問題なく生活ができます。

今回は、犬の脾臓摘出術について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬が脾臓摘出術を受けるか迷っている方は参考にしてみてください。

犬の脾臓の役割

犬の脾臓が体の中でどんな役割を果たしているのか、あまり馴染みがないかもしれません。
主な役割は以下の4つです。

  • 血液の濾過
  • 血液の貯蔵
  • 免疫応答
  • 造血機能

それぞれについて見ていきましょう。

血液の濾過

犬の脾臓の一番の大きな役割は、血液の濾過機能です。
具体的には、古くなった赤血球を破壊して血液をきれいにしています。
また、破壊した赤血球内の鉄を回収してリサイクルをしています。

血液の貯蔵

犬の脾臓では大量の血液を貯蔵しており、大出血のリスクに備えています。

免疫応答

犬の脾臓では免疫応答を行っています。
主に血液中で増殖する病原体に対する免疫反応をしています。

造血機能

犬の脾臓には造血機能がありますが、基本的には胎児期のみの機能です。

犬の脾臓摘出術の適応

犬の脾臓摘出術が適応となる病気について解説していきます。
犬の脾臓摘出術は脾臓を全て摘出する手術であり、以下のような病気に適応されます。

  • 脾臓の腫瘍
  • 脾臓破裂
  • 脾臓捻転
  • 免疫介在性溶血性貧血

それぞれについて詳しく解説していきます。

脾臓の腫瘍

脾臓の腫瘍は高齢犬に多く、超音波検査で脾臓にしこりを見つけたらその3分の2は腫瘍であると言われています。
腫瘍が小さいうちは無症状なことがほとんどで、健康診断の超音波検査によって見つかることも多いです。
特に悪性腫瘍の場合は破裂して出血を起こすことがあり、出血量が多いと命に関わります。
また、悪性腫瘍の場合は転移するリスクもあります。
脾臓の腫瘍は、摘出して病理検査に提出しなければ良性か悪性か判断できないため、早めに摘出手術を行うことが大切です。

「脾臓の腫瘍の部分だけを切除したらダメなの?」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
脾臓の腫瘍の部分だけを摘出しようとすると、肉眼ではわからない小さな腫瘍を取り残す可能性があります。
脾臓をすべて摘出することで、腫瘍の取り残しがないようにすることが大切です。

 

脾臓破裂

脾臓破裂は、脾臓の腫瘍が破裂する場合と交通事故などの外傷によって起こる場合があります。
脾臓が破裂すると大量に出血してショックを起こし、早期に対応しなければ死亡することもあります。
超音波検査などで脾臓破裂だと診断がついたら、すぐに緊急手術を行い破れた脾臓を摘出して止血します。

脾臓捻転

脾臓捻転は非常にまれな病気ですが、脾臓が何らかの理由でねじれて血流が遮断されてしまう病気です。
強い腹痛を伴い、発見時には脾臓組織が変性していることも多いため、脾臓摘出術によって治療されます。

免疫介在性溶血性貧血

免疫介在性溶血性貧血は、自己免疫性疾患の一つで自分の免疫細胞が赤血球を破壊して急速に貧血を起こす病気です。
免疫介在性溶血性貧血は内科疾患であり、内科的な治療を行うことがほとんどです。
しかし、まれに治療に反応しないケースがあり、脾臓摘出術を行うことで救命される場合があります。

犬の脾臓を摘出しても問題ないの?

犬の脾臓摘出術は、脾臓をすべて摘出する手術です。
脾臓を摘出することで脾臓の腫瘍や破裂した部分は取り除かれますが、脾臓がなくなることによる影響が気になりますよね。
脾臓が担っていた役割は、肝臓やリンパ節が代替するため日常生活に支障は出ません。
血液のろ過機能は肝臓が、免疫応答はリンパ節が代わりに担ってくれます。
しかし、免疫や血液貯蔵能力は健康な個体よりは落ちてしまうため、感染症にかかったり事故にあったりしないように気を付ける必要があります。

犬の脾臓摘出術と予後

脾臓摘出後の予後は疾患によります。
脾臓腫瘍の治療で脾臓摘出術を行った場合の予後は、血管腫などの良性腫瘍であれば良好です。
血管肉腫やリンパ腫などの悪性腫瘍であった場合、予後は悪いことが多いです。
腫瘍によっては術後に抗がん剤治療を行うこともあります。

外傷による脾臓破裂や脾臓捻転の場合は、手術時の症例の状態に大きく影響されます。
また、免疫介在性溶血性貧血の場合は脾臓摘出術によって確実に治るわけではないため、手術をするかどうかは犬の状態と合わせて獣医師とよく相談しましょう。

まとめ

犬の脾臓摘出術は、特に脾臓の腫瘍の治療でよく実施される手術です。
脾臓という臓器をまるごと摘出する手術ですが、術後は問題なく日常生活を送ることができます。
脾臓の腫瘍は放っておくと破裂したり、悪性腫瘍だと転移する可能性もあるため早めに手術をすることが望ましいです。
体調を崩す前に定期的に健康診断を受けて、脾臓に腫瘍がないかを獣医師に確認してもらいましょう。

当院では、犬の脾臓摘出術などの外科手術にも対応しています。
手術が必要な際にもわかりやすく丁寧な説明を行い、その子にとってベストな治療を飼い主様とともに考えています。
愛犬の体調不良に気が付いたら、お気軽にご相談ください。

よくあるご質問(Q&A)

Q.犬の脾臓を全部摘出しても本当に大丈夫ですか?

A.犬の脾臓を摘出しても、肝臓やリンパ節が役割を補うため日常生活に大きな支障が出ることは少ないとされています。
ただし、免疫機能や血液の貯蔵機能はやや低下する可能性があるため、術後は体調の変化に注意することが大切です。

Q.脾臓の腫瘍は様子を見ることはできませんか?

A.犬の脾臓の腫瘍は、見た目や画像検査だけでは良性か悪性かを判断できないことが多いです。
破裂して出血を起こすリスクもあるため、状態や大きさによっては早期の摘出が検討されることがあります。

Q.脾臓摘出術のあとに抗がん剤は必ず必要ですか?

A.犬の脾臓摘出術後に抗がん剤が必要かどうかは、病理検査の結果や腫瘍の種類によって異なります。
良性腫瘍であれば追加治療が不要なこともありますが、悪性腫瘍の場合には補助治療が提案されることがあります。