犬のクッシング症候群とは?|犬の多飲多尿やお腹が出る原因になるクッシング症候群について解説

「最近、犬が水をたくさん飲むようになった」
「トイレの回数や尿の量が増えた気がする」
「食欲はあるのに、お腹だけぽっこりしてきた」
犬にこのような変化が見られる場合、「クッシング症候群」という病気が関係しているかもしれません。
犬のクッシング症候群は、中高齢の犬でよく見られるホルモンの病気です。
ゆっくり進行することが多いため、年齢による変化と思われて見逃されてしまうこともあります。
今回は犬のクッシング症候群について、
- 原因
- サイン
- 診断
- 治療
- 自宅でできるケア
などについてわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の体調変化に気づいた際の参考にしていただければ幸いです。
犬のクッシング症候群とは?
犬のクッシング症候群とは、副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気です。
副腎は腎臓の近くにある小さな臓器で、
- 体の代謝
- 免疫
- ストレスへの反応
などを調整する重要なホルモンを分泌しています。
その中でもコルチゾールは、
- 代謝の調整
- 炎症の抑制
- 血糖値の維持
- ストレスへの対応
など、体にとって重要な働きを持つホルモンです。
クッシング症候群の犬では、コルチゾールが長期間にわたって過剰に分泌されることで、体のさまざまな部分に異常が起こります。
犬のクッシング症候群は、7歳以上の中高齢の犬で発症することが多い病気として知られています。
犬のクッシング症候群のサイン
犬のクッシング症候群は、ゆっくり進行する病気のため、初期には気づきにくいこともあります。
犬に次のような変化が見られた場合は、クッシング症候群のサインかもしれません。
- 水をたくさん飲む(多飲)
- 尿の量が増える(多尿)
- 食欲が増える
- お腹がぽっこりする
- 毛が薄くなる(脱毛)
- 筋肉が落ちる
クッシング症候群の犬では、多飲多尿が最もよく見られる症状です。
筋肉が弱くなることで腹筋が支えられなくなり、お腹だけがぽっこりと膨らんで見える「ポットベリー」と呼ばれる体型になることがあります。
さらに、クッシング症候群の犬は皮膚が薄くなったり毛が抜けやすくなるため、
- 脱毛
- 膿皮症
- マラセチア皮膚炎
などの皮膚トラブルを繰り返すこともあります。
このような症状はゆっくり進行するため、「年齢のせいかな」と思われることも多いですが、早めの検査が重要です。

犬のクッシング症候群の原因
犬のクッシング症候群は、さまざまな原因によって引き起こされます。
代表的な原因をいくつか解説していきます。
下垂体腫瘍
下垂体腫瘍によってクッシング症候群が引き起こされます。
下垂体は脳の下にある小さな臓器で、副腎の働きをコントロールするホルモンを分泌しています。
下垂体に腫瘍ができると、副腎を刺激するホルモンが過剰に分泌されます。
その結果、副腎からコルチゾールが過剰に分泌され、クッシング症候群が引き起こされます。
犬のクッシング症候群の約80〜90%はこのタイプとされています。
副腎腫瘍
副腎にできた腫瘍によってクッシング症候群が引き起こされます。
副腎腫瘍では、副腎自体がコルチゾールを過剰に分泌するようになります。
副腎腫瘍によってクッシング症候群が引き起こされている場合は、反対側の副腎は萎縮していることがほとんどです。
副腎腫瘍には、
- 良性腫瘍
- 悪性腫瘍
の両方があります。
医原性クッシング症候群
医原性クッシング症候群は、ステロイド薬の長期使用によって引き起こされます。
皮膚病や免疫疾患などの治療でステロイドを長期間使用している場合に起こることがあります。
犬のクッシング症候群の診断
犬のクッシング症候群が疑われる場合、まず血液検査や超音波検査を行い、体の状態を確認します。
クッシング症候群は症状だけでは診断が難しいため、ホルモン検査を組み合わせて診断することが重要です。
犬のクッシング症候群を診断するために、動物病院で主に次のような検査が行われます。
- 血液検査
- 尿検査
- 腹部超音波検査
- ACTH刺激試験
- 低用量デキサメタゾン抑制試験
血液検査ではALPやコレステロールの上昇など、クッシング症候群でよく見られる変化が確認されることがあります。
腹部超音波検査では副腎の大きさや腫瘍の有無を確認します。
副腎の形状や大きさは原因の見極めに役立つ重要な情報です。
これらの検査結果と多飲多尿の症状を総合的に判断し、
- 下垂体性クッシング症候群
- 副腎腫瘍によるクッシング症候群
など原因を推測していきます。
犬のクッシング症候群は原因によって治療の選択肢が変わるため、原因の見極めが大切です。

犬のクッシング症候群の治療
犬のクッシング症候群の治療方法はいくつかあり、原因や症状の程度によって治療法方針が決定します。
代表的な治療をいくつか紹介します。
内科治療
クッシング症候群で多くの犬に行われるのが内科治療です。
内科治療では副腎から分泌されるコルチゾールの量を抑える薬を使用します。
代表的な薬としてトリロスタンがあります。
トリロスタンは副腎でのホルモン合成を抑えることで、コルチゾールの過剰分泌をコントロールする薬です。
クッシング症候群の治療では薬を開始した後に、
- ACTH刺激試験
- 血液検査
- クッシング症候群の症状
などを確認しながら、薬の量を調整する必要があります。
薬の量が少なすぎると症状が改善せず、逆に多すぎると副腎皮質機能低下症のような状態になる可能性もあるため、定期的な検査がとても重要です。
外科治療
副腎腫瘍が原因の場合には、副腎摘出手術が選択されることもあります。
副腎腫瘍が片側に原局しており、転移がない場合には手術によって根治が期待できることもあります。
しかし、副腎は大きな血管の近くにある臓器のため手術は難易度が高く、専門施設で行われることが多いです。
そのため、
- 腫瘍の大きさ
- 転移の有無
- 犬の年齢や全身状態
などを総合的に評価して、手術を行うかどうか慎重に判断します。
医原性クッシング症候群の治療
ステロイドの長期使用によって起こる医原性クッシング症候群の場合は、ステロイドの量を徐々に減らしていく治療を行います。
ただし、急にステロイドを中止すると体に大きな負担がかかることもあるため、必ず獣医師の指示のもとで慎重に減量していく必要があります。
犬がクッシング症候群と付き合うために自宅でできる日常ケア
愛犬がクッシング症候群と診断されたら、今後どうなるのか心配ですよね。
クッシング症候群は長期間の管理が必要な病気ですが、適切な治療と管理によって生活の質を保つことができます。
自宅では次のような点を意識しましょう。
- 水を飲む量の変化を観察する
- 尿の量や回数を確認する
- 体重や体型の変化をチェックする
- 皮膚の状態を観察する
- 定期的に動物病院で検査を受ける
クッシング症候群の犬では免疫力が低下しやすいため、皮膚感染や外耳炎などのトラブルが起こりやすくなることがあります。
そのため、犬の皮膚や耳の状態を日頃からよく観察することが大切です。

まとめ
犬のクッシング症候群は、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気です。
特に中高齢の犬で見られることが多く、
- 水をたくさん飲む
- 尿の量が増える
- お腹がぽっこりする
- 毛が薄くなる
といった症状が見られることがあります。
クッシング症候群はゆっくり進行する病気ですが、早期に診断して治療を行うことで症状をコントロールすることができます。
当院では、クッシング症候群の検査や治療から長期的な体調管理まで丁寧にサポートしています。
愛犬の体調に気になる変化がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。