犬の僧帽弁閉鎖不全症とは?|犬の心臓病に多い僧帽弁閉鎖不全症について解説

笑っている白いチワワ

「最近、犬が咳をするようになった」
「僧帽弁閉鎖不全症と診断されたけど、どんな病気かよくわからない」
「薬を飲み始めたが、このまま普通に生活できるか不安」
犬を飼っているなかで、こんな不安を感じたことはありませんか?
犬の僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心臓病のなかで最も多く見られる病気です。
とくに小型犬で多く、シニア世代の犬では一般的な病気といえます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症は進行するまで症状が出にくいため、知らないうちに病気が進んでいることも少なくありません。

本記事では犬の僧帽弁閉鎖不全症について、

  • どんな病気か
  • 症状の特徴
  • 治療方法
  • 日常ケアのポイント

をわかりやすく解説します。
愛犬の心臓の状態を正しく理解し、適切なケアができるようにぜひ最後までお読みください。

犬の僧帽弁閉鎖不全症とは?

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、心臓にある「僧帽弁」という弁に異常が起こる病気です。
正常な心臓では、僧帽弁は左心房から左心室へ血液が送られるときに開き、逆流しないようにしっかり閉じます。
僧帽弁閉鎖不全症はこの弁がきちんと閉じられなくなり、血液の一部が逆流を起こしてしまう病気です。
血液が逆流することで心臓に余分な負担がかかり続け、徐々に心臓の機能が低下していきます。

犬の心臓病の約75〜80%が僧帽弁閉鎖不全症によるものとされており、とくに小型犬に多いのが僧帽弁閉鎖不全症の特徴です。
小型犬の中でも、

  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • チワワ
  • ポメラニアン
  • マルチーズ

などの犬種は僧帽弁閉鎖不全症の発症リスクが高いとされています。

犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージ

僧帽弁閉鎖不全症は、進行度に応じてステージA〜Dに分類されます。
ステージによって治療方針が異なるため、現在どの段階にあるかを正しく把握することが大切です。
それぞれのステージについて解説します。

ステージA

ステージAは、まだ犬に心臓病は発症していないものの、僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種に該当する段階です。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなど、好発犬種がこれに当たります。

ステージB

ステージBは、聴診で犬の心臓に心雑音が確認されているものの、咳や呼吸困難などの症状はまだ出ていない段階です。
ステージBはさらにB1とB2に分けられます。

  • B1:心臓の大きさが正常範囲内にある
  • B2:心臓の大きさが正常範囲より大きい

ステージB2は僧帽弁閉鎖不全症の治療が開始される段階になります。
ステージB2への移行を見極めるために、定期的なレントゲン検査や超音波検査が必要です。

ステージC

ステージCは、犬の肺に水がたまる肺水腫が起こり、咳・呼吸困難などの心不全の症状が現れている段階です。
ステージCの犬では以下の症状が見られることがあります。

  • 安静時でも咳が出る
  • 呼吸が早い
  • ぐったりして動けない

これらの症状が見られた場合は緊急性が高いため、すぐに動物病院を受診しましょう。
ステージCの犬では利尿薬を中心とした複数の薬を組み合わせた治療が行われます。

ステージD

ステージDは、標準的な治療を行っても心不全症状のコントロールが難しくなった、最も重篤な段階です。
薬の種類や量を見直しながら、心不全の症状を和らげることを目標にした治療が続けられます。
犬の状態によっては酸素吸入や入院管理が必要になることもあります。

俯きながら歩いている茶色チワワ

犬の僧帽弁閉鎖不全症の検査

僧帽弁閉鎖不全症の診断には、主に以下の検査が行われます。

  • 聴診
  • レントゲン検査
  • 心臓超音波検査
  • 血液検査

これらの検査は病気の進行度を正確に把握するために行われます。
とくに、心臓超音波検査は治療のタイミングや薬の種類を判断するうえで欠かせない検査となります。

犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療

犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療は、病気の進行度に合わせて行われます。

内科治療

犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療は薬による内科治療が中心です。
病気のステージに応じて、以下のような薬が使われます。

  • 強心薬
  • 利尿薬
  • 血管拡張薬

内科治療の目的は、薬によって僧帽弁閉鎖不全症の進行を遅らせ、症状をコントロールすることです。
一度始めた薬は基本的に生涯にわたって続ける必要があり、定期的な検査で薬の量や種類を調整していきます。

外科治療

近年では、僧帽弁を修復する外科手術も選択肢のひとつとなっています。
外科治療は僧帽弁閉鎖不全症の根本的な原因を取り除くことができる治療法です。
ただし、人工心肺装置を使った高度な手術であり、実施できる施設は国内でも限られています。
費用や体への負担も大きいため、手術が適応かどうかは犬の状態や飼い主様のご意向をふまえて慎重に判断されます。

僧帽弁閉鎖不全症と診断された犬の日常ケア

犬が僧帽弁閉鎖不全症と診断を受けた後も、日常生活を工夫することで犬のQOLを維持することができます。
自宅でできる日常生活の工夫に以下のようなものがあります。

  • 運動管理
  • 食事・体重管理
  • 呼吸数のチェック
  • 定期的な通院

過度な運動や肥満は犬の心臓に負担を増やすので、適切な運動量と体重を維持することが重要です。
定期的に犬の安静時の呼吸回数を数えることも大事です。
1分間の呼吸数が40回を超えるようであれば、肺に水がたまっている可能性があるため、すぐに動物病院を受診しましょう。
僧帽弁閉鎖不全症の症状が安定していても、定期的な心臓の検査は欠かせません。
心臓の状態は徐々に変化するため、定期的に心臓の状態を確認してもらうことが大切です。

切り株の上にいるキャバリア

まとめ

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、進行するまで症状が出にくい病気です。
適切な治療と日常ケアを続けることで症状をコントロールし、長く穏やかな生活を送ることが可能です。
「最近咳が増えた気がする」「呼吸が早い」と感じたときは、僧帽弁閉鎖不全症のサインかもしれないので、早めに動物病院を受診しましょう。

当院では僧帽弁閉鎖不全症など循環器科診療にも力を入れております。
「うちの子は大丈夫かな」と感じる小さな変化も、どうぞお気軽にご相談ください。