猫の動脈血栓塞栓症とは?|後ろ足の麻痺の原因と治療について解説

「ある日、急に後ろ足が動かなくなり、痛そうに鳴いている」
「猫が心臓病といわれたけど、血栓の話がよくわからない」
「さっきまで元気だったのに突然ぐったりしてしまい、どう対応すべきか迷っている」

猫を飼っている中でこんな不安に直面されていませんか?
猫の動脈血栓塞栓症は、ある日突然起こる緊急性の高い病気です。
進行が早く、対応が遅れると命に関わることもあります。

本記事では猫の動脈血栓塞栓症について

  • どんな病気か
  • 症状の特徴
  • 治療方法
  • 予防方法

をわかりやすく解説します。
いざという時に落ち着いて行動できるよう、ぜひ最後まで読んでいただき参考にしてください。

猫の動脈血栓塞栓症とは?

動脈血栓塞栓症は、心臓の中でできた血のかたまりが血管につまる病気です。
猫の動脈血栓塞栓症の原因の多くは心臓病です。
心臓病があると心臓の動きが悪くなり、心臓の中の血流がよどみやすくなります。
その結果、心臓の中でできるのが血栓です。

心臓でできた血栓は血流に乗って移動し、細い血管でつまります。
血栓がつまる場所はさまざまです。
後ろ足へ向かう血管や、前足や腎臓などの臓器へ向かう血管でつまることもあります。
その中でも特に多いのが、お腹のあたりで左右の後ろ足へ分かれる腹大動脈です。
この腹大動脈で血栓がつまると、左右の後ろ足に一気に血液が届かなくなります。

猫の動脈血栓塞栓症の症状

横になっているキジトラ白猫

猫の動脈血栓塞栓症の症状は、血栓がつまる場所によって大きく変わります。

後ろ足の血管でつまる場合

猫の動脈血栓塞栓症では後ろ足に向かう血管でつまるケースが最も多く、下記のような典型的な症状がみられます。

  • 強い痛みが出て「ギャー」と鳴く
  • 足に力が入らず、立てない・歩けない
  • 足先が冷たくなる
  • 肉球の色が白っぽくなる
  • 足の脈が触れなくなる

特にこれらの症状が同時にみられる場合は、動脈血栓塞栓症の可能性が高いと考えられます。

前足の血管でつまる場合

前足でつまる場合は、後ろ足ほど典型的ではないため見逃されやすい傾向があります。

  • 前足に力が入らない
  • 歩き方が不自然になる
  • 前足の冷感や痛みがみられる

「少し様子がおかしい」と感じる程度の変化でも注意が必要です。

臓器の血管でつまる場合

腎臓や腸、脳などの血管でつまると、足の麻痺とは異なる症状が現れます。

  • 腎臓:元気消失、食欲低下、急激な体調悪化がみられる
  • 腸:嘔吐や腹痛、ぐったりする
  • 脳:ふらつきや意識レベルの低下がみられる

上記のような症状は一見すると別の病気のように見えることもあるため、判断が難しいケースもあります。
また、呼吸が苦しい場合は注意が必要です。
心臓の働きが低下し、肺に水がたまる肺水腫を起こしている可能性があります。

猫の動脈血栓塞栓症の治療

猫の動脈血栓塞栓症の治療は痛みの緩和が最優先に行われます。
また、血栓がこれ以上広がらないようにする治療も同時に行われます。

状態や基礎疾患によっては、手術が選択肢に入ることもあるでしょう。

内科治療

猫の動脈血栓塞栓症では、まず強い痛みをやわらげるために鎮痛薬が使用されます。
あわせて、これ以上血栓が大きくならないよう抗血小板薬や抗凝固薬も用いられます。
血栓を溶かす治療が検討されることもありますが、出血などのリスクを考慮して治療は慎重に判断されることが一般的です。
また、基礎疾患に心臓病がある場合は、利尿薬や酸素管理などによる心不全の治療も同時に行われます。

手術

血管内の血栓を取り除く治療として、全身麻酔をかけて手術が行われることもあります。
具体的には、カテーテルでバルーンを使って血栓を引き出す方法や、血管を切開して直接血栓を摘出する方法です。
しかし、高度な設備と専門的な技術が必要となるため血栓の手術を実施できる施設は限られています。

また、心臓病のある猫では麻酔の負担が大きくなります。
さらに猫の動脈血栓塞栓症は発症から短時間で治療が開始されることが重要ですが、手術は準備や搬送に時間を要するため、そのタイミングに間に合わせることが難しい場合もあります。
このような点を踏まえ、手術を行うかどうかは獣医師によって慎重に判断されます。

予防

暖を取り合っている茶白猫

猫の動脈血栓塞栓症の予防には心臓病の早期発見が重要です。
早期に心臓の異常が見つかり治療を受けることで、血栓症の予防にもつながります。

猫では遺伝的な要因により生まれつき心臓病を持っている場合があります。
若い猫で症状がなくても、基本的な健康診断に加えて一度は心臓の超音波検査を受けておくと安心ですね。

年齢を重ねたシニア猫では心臓病が進行して見つかるケースも増えてきます。
呼吸数の増加や元気の低下など、小さな変化に早く気づくことが重症化の予防につながります。

まとめ

猫の動脈血栓塞栓症は、突然発症する緊急性の高い病気です。
後ろ足の麻痺や強い痛みがみられた場合は、動脈血栓塞栓症を疑う必要があります。

「急に歩けない」「足が冷たい」といった変化に気づいた場合は、迷わず早めに動物病院を受診してください。
早期に治療を受けることで、動脈血栓塞栓症から猫が回復できる可能性が高まります。

当院では、猫の動脈血栓塞栓症や心臓病の診療に対応しています。
これらの病気は突然重症化することがあるため、日頃からの検査と管理が重要になります。

症状が出てからでは対応が限られることもあるため、定期的な健康診断や心臓のチェックをご検討ください。
また、もし気になる症状がすでにある場合はなるべく早めにご相談ください。