緩和ケア・ターミナルケア科
当院では緩和ケア・ターミナルケア科を設けています。
皆さんは緩和ケア・ターミナルケアという言葉にあまり聞きなじみがないかもしれません。
緩和ケア・ターミナルケアとは、病気の進行や老齢による変化に直面する動物とそのご家族を支えるための医療です。
緩和ケア・ターミナルケア科はどんな時に利用すればいいか前もって知っておくことで、いざという時に困りませんね。
緩和ケアとは
緩和ケアとは、がんや慢性腎臓病、糖尿病などの完治が難しい病気に対して積極的な治療はせずに苦痛を予防する医療です。
苦痛や治療に対する痛みや不快感をやわらげることで動物の生活の質であるQOLをあげることが目的です。
QOLをあげることで動物が快適な生活を送れるようになります。
積極的な治療はしないといっても、病気の治療を完全にやめてしまうのではありません。
症状に対して動物の負担が少ない検査や治療を行っていくのが緩和ケアの特徴です。
ターミナルケアとは
ターミナルケアとは別名終末期医療といいます。
動物の終末期に焦点を当てた医療です。
病気が治らない状況や老衰が進んでいく中で、残された時間を穏やかに過ごすための支援を提供します。
ターミナルケアは、動物が安心して最後の時間を過ごせるようにするだけではありません。
ご家族が心の準備をととのえ、ペットを見送る環境を整えることも特徴です。
緩和ケア・ターミナルケアでできること
緩和ケアとターミナルケア科がどんな科なのかなんとなく分かりましたか?
では具体的に緩和ケアとターミナルケアではどのような医療を行っているのでしょうか。
詳しく解説していきます。
痛みの管理
病気やけがによる慢性的な痛み、終末期特有の苦痛に対して、痛みを緩和するための薬物療法や処置を行います。
動物の状態に応じて鎮痛剤や抗炎症薬を使用し、体への負担を考慮しながら痛みを取り除いていきます。
強すぎる痛みには獣医師の管理のもと、麻薬を使用することも。
動物は痛みがあると食欲がなくなったり、眠れなくなったりするため、痛みを取り除くことで普段通りの生活に近づけることが可能です。
栄養管理
動物は加齢や病気の進行により食欲が低下することや、栄養の吸収がうまくいかなくなったりすることがあります。
栄養管理は動物の嗜好や体調に合わせて食事を考えたり、栄養補助剤などを使ったりして動物の栄養状態を維持するサポートを行う治療です。
慢性腎臓病の動物は特別な療法食を食べていることも多いですが、味を嫌がる動物も少なくありません。
動物が療法食をおいしく食べてもらえるようなアドバイスも行っています。
投薬治療
緩和ケア・ターミナルケアでは、動物の症状を緩和するための投薬治療を行います。
けいれんを止める薬や、不安を軽減する薬、吐き気を抑える薬など、症状に合わせて動物が快適に過ごせるように薬を選択していきます。
気になる症状がある場合は獣医師に相談してください。
点滴治療
脱水症状や栄養不足に対処するために点滴治療を行います。
点滴治療は病院内でも実施しますが、獣医師の指導の下ご家庭でも行っていただけます。
点滴の量や内容を確認するために定期的な通院は行うようにしてください。
呼吸管理
呼吸器疾患や病気の進行により、呼吸困難が生じる場合は酸素療法などで呼吸の管理を行います。
自宅でも呼吸管理が行えるように、専用の酸素濃縮器などのレンタルや使用についてのアドバイスも行っています。
呼吸が楽になることで動物の食欲や睡眠の質があがる可能性がありますね。
往診
動物やご家族が通院を負担に感じている場合は、往診も行っています。
動物が慣れ親しんだ環境で診察やケアが受けられるのがメリットです。
往診ではできる医療に制限もありますが、可能な限りの医療を提供します。
特にターミナルケアで動物の最期を可能な限りご自宅で看たいという場合は、往診での医療がおすすめです。
最後に
緩和ケア・ターミナルケア科は動物とその家族に寄り添いながら、一緒に過ごす時間をより豊かに、より穏やかにするための診療科です。
病気のことや動物自身のことに加え、ご家族の悩みに関してもぜひお気軽にご相談ください。
緩和ケア・ターミナルケア科では動物とご家族が最期の瞬間まで笑顔で過ごせるようなお手伝いをしています。