ウサギの子宮疾患について|ウサギの血尿は要注意?

芝生にいるうさぎ

ウサギは近年飼育頭数が増えているペットの一つです。
診察できる動物病院も少しずつ増えてきてウサギの寿命も延びてきています。
人間や犬猫と同様に長生きすることで以前は見られなかった病気も増えています。
ウサギがかかりやすい病気の一つに子宮疾患があります。
「子宮疾患ってどんな病気?」
「どんな治療が必要なの?」
「予防方法はあるの?」
こういった疑問をお持ちのウサギのご家族も多いかもしれません。
今回は、ウサギの子宮疾患について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、大切なウサギの健康を守る参考にしてください。

ウサギの子宮疾患とは?

ウサギの子宮疾患は、避妊手術を受けていないメスのウサギに特に多く見られる子宮の病気の総称です。
ウサギは避妊をしていない場合、4歳を超えると60%以上が子宮疾患を発症すると言われています。
子宮疾患にはいろいろな病気がありますが、中でも子宮蓄膿症や子宮腺癌などが特に多く見られます。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮に細菌が感染することで起こる病気です。
子宮に細菌が感染することで、子宮に膿がたまったり陰部から膿が出たりしてしまいます。
ウサギの子宮蓄膿症は避妊していない、中高齢以上のウサギでの発症が多いです。
放置すると細菌が全身に増殖してしまい、命に関わることがある怖い病気ですね。

子宮腺癌

子宮腺癌は子宮にできる悪性の腫瘍の一つです。
進行が早く、他の臓器に腫瘍が転移することもあります。
転移が多いのは

  • 消化管
  • 肝臓
  • 脾臓

などですが、全身の臓器に転移する可能性がある腫瘍です。
子宮腺癌は治療しないと24ヶ月以内にほとんど命を落としてしまうため、早期治療が必要な病気です。

ウサギの子宮疾患の症状

ウサギの子宮疾患では、ほとんどの病気で次のような症状が見られることがあります

  • 元気や食欲が低下する
  • 血尿が出る
  • 陰部からの出血

しかし、多くの場合はこれらの症状が出るころには病気が進行しています。
そのため、日々の健康観察に加え、定期的な健康診断を受けることは非常に重要です。

なんとなく元気がないかもとご家族が感じて、病院で検査をすると子宮疾患だったということは少なくありません。
「こんな症状で病院に行ってもいいのかな」などと思わずに、何か気になることがあれば動物病院へ相談しましょう。

血尿は危険って本当?

もしかしたらウサギを飼っているご家族の中には「ウサギに血尿が出たら危ないよ」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
では、血尿は本当に危険なサインなのでしょうか?

確かにウサギの子宮疾患は、血尿で診断されることもあります。
しかし、血尿の原因は子宮疾患だけではありません。

  • ポルフィリン尿(食べ物によって尿が赤く染まる)
  • 膀胱炎
  • 膀胱結石

などが血尿の原因としてよく見られます。

実は子宮疾患でよく見られるのは、血尿よりも陰部からの出血です。
陰部からの出血は血尿と見分けがつきづらいです。
血尿が出たと感じた場合には陰部からの出血の可能性もあるので、どちらにせよ早急に動物病院を受診するのが安心ですね。

犬猫と違ってウサギは診察できる動物病院が限られています。
ウサギの診察経験が少ない動物病院では、血尿から膀胱炎を診断され、抗生剤を処方されていたけど実は子宮疾患だったというケースも少なくありません。
動物病院へ行くときは、ウサギの診察経験が豊富な病院を選ぶようにしましょう。

診察を受けるウサギ

ウサギの子宮疾患の治療は?

ウサギの子宮疾患の一番の治療法は、子宮を摘出する手術です。
全身麻酔をかけて子宮やその周辺の病変を含めて外科的に処置します。
腫瘍などで転移がある場合には、放射線治療などの追加の治療が必要になることもあります。

ウサギの小さな体に麻酔をかけることに、抵抗のあるご家族もいらっしゃるかもしれません。
しかし、子宮疾患は治療が遅れれば遅れるほど、命に関わる可能性が高いです。
動物病院で子宮疾患の診断を受けた場合には、できるだけ早く治療に踏み切ることが大切ですね。
もしも手術や麻酔に関して不安なことがあれば、遠慮なく獣医師に相談しましょう。

ウサギの子宮疾患は予防できる?

ウサギは1年中繁殖が可能ですが、飼育されているウサギのほとんどは妊娠せずに一生を終えます。
つまり年中発情しっぱなしになってしまうのですね。
そのためホルモンのバランスが崩れ、子宮疾患が起こりやすいと考えられています。

ホルモンをおさえるために有効なのは、避妊手術で子宮や卵巣をとってしまうことです。
ウサギの子宮疾患はほとんどの場合、避妊手術を受けることで予防が可能です。
特に、2歳ごろまでに避妊手術を行うことで、子宮蓄膿症や子宮腺癌のリスクを大幅に減らすことができます。

避妊手術のタイミングや手術の詳細については、獣医師と相談しながら決めるのがいいでしょう。

まとめ

ウサギの子宮疾患は、避妊していないメスウサギに多く見られる病気です。
子宮疾患には様々な病気がありますが、ほとんどが放置すると命に関わる可能性があります。
元気や食欲がない、陰部からの出血があるなどの症状が出ているときには病気が進行している可能性があります。
些細なウサギの変化を見逃さずにすぐに動物病院へ連れていくことが重要です。
また、避妊手術を行うことでほとんどの子宮疾患を予防することができます。
当院ではウサギの避妊手術も実施しています。
ウサギの病気の診察だけではなく、日ごろの健康診断や避妊手術などに関して疑問などがあればぜひご相談ください。