犬の子宮蓄膿症について|治療の子宮卵巣摘出術とは?

毛布から顔を出している身ニチュアダックスフント

犬の子宮蓄膿症について|治療の子宮卵巣摘出術とは?

犬を飼っている皆様は、子宮蓄膿症という病気について聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。
子宮蓄膿症について

  • 避妊手術で予防ができる?
  • 若いうちの発症リスクは低い?
  • 発症してしまったら緊急手術になる?

など何となく聞いたことがあっても詳しくは知らないという方が多いのではないでしょうか。
犬の子宮蓄膿症は、昨日まで元気だった愛犬が急に命の危険に陥る恐ろしい病気です。

今回は犬の子宮蓄膿症について解説します。
愛犬が子宮蓄膿症になってしまった方や愛犬に避妊手術を受けさせていない方はぜひ、最後までお読みいただき詳しく知っておきましょう。

子宮蓄膿症とは

子宮蓄膿症とは、子宮内膜の細菌感染により子宮に膿が溜まってしまう疾患です。
避妊手術を行なっていない犬では、通常半年に1度発情出血があります。
これは、犬の性周期が6ヶ月前後であるためです。
発情出血が始まってから1〜2ヶ月の間、犬は黄体期という時期に入り子宮内膜が厚みを増します。
この状態の子宮は子宮内に存在する細菌が感染症を起こしやすいだけでなく、感染症と戦う白血球の反応を抑制してしまいます。
このような理由から、黄体期には子宮が感染症を起こしやすく、膿が溜まってしまう子宮蓄膿症を発症しやすいです。
子宮内で感染を起こす細菌にはいくつかの種類があります。
その中でも、子宮蓄膿症を起こすのはエンドトキシンと呼ばれる毒素を発生する細菌によるものが多いです。
エンドトキシンを産生する細菌による感染だった場合、産生されたエンドトキシンが血中に入り込むと敗血症という全身に炎症を引き起こすような状態になる恐れがあります。
敗血症になってしまうと、犬の全身状態が急激に悪くなり、元気に病院を退院できる可能性が一気に下がってしまいます。
子宮蓄膿症は、避妊手術を実施していないすべての犬で発症する可能性があり、8歳以上の高齢犬での発症リスクが高いです。

茶色いラブラドールレトリーバー

子宮蓄膿症の症状って?

子宮蓄膿症は重症になると敗血症を引き起こす恐ろしい疾患です。
なるべく早期に発見できるよう子宮蓄膿症の症状について知っておきましょう。

外陰部からの排膿

子宮蓄膿症には、子宮の出入り口である子宮頸管が開いている開放性子宮蓄膿症と子宮頸管が閉じている閉鎖性子宮蓄膿症があります。
開放性子宮蓄膿症の場合は子宮で発生した膿が、頸管から外陰部へ流れ出てくるようになります。
外陰部から出てきた膿はポタポタと垂れ流しになっていればご家族が見つけやすいですが、犬がなめとってしまう場合もあります。
排膿が認められなくても、犬がしきりに外陰部を舐めていたり、閉鎖性子宮蓄膿症の可能性があるため注意が必要です。

元気食欲低下

子宮蓄膿症による元気食欲低下は、必ずしも起こるわけではありません。
敗血症になってしまうと、発熱やお腹の違和感などにより活動性が落ちたり、食欲がなくなってしまうことがあります。

多飲多尿

子宮蓄膿症では、感染した細菌の毒素により尿の量が増えるようになります。
これは、脳から腎臓へ尿の量を制限するホルモンがエンドトキシンにより抑制されてしまうためです。
犬で排尿量が増えると体の中の水分量が減ってしまうので、それを補うために水を飲む量が増えます。
犬が多飲多尿の状態になると、薄い尿を大量にするようになります。

腹囲膨満

犬の子宮蓄膿症では、閉鎖性子宮蓄膿症の場合はもちろん開放生子宮蓄膿症でも、溜まった膿により犬の体内で子宮が非常に大きく拡張することが少なくありません。
大きく拡張した子宮により外から見てもお腹が膨れたように見えることがあります。

毛布から顔を出しているジャックラッセルテリア

子宮蓄膿症の治療は子宮卵巣摘出術です

子宮蓄膿症の治療は卵巣と子宮の摘出手術が基本です。
膿の溜まっている子宮を摘出するだけでなく、そもそもの感染症の原因である卵巣をしっかり摘出することが重要です。
子宮卵巣摘出術は、若齢のときに行う避妊手術と内容は変わりません。
お腹を開けて左右の卵巣とそこにつながる子宮を摘出します。
しかし、通常の避妊手術と比べると、

  • 高齢で発症することが多い
  • 敗血症により全身状態が良くない

という点で麻酔のリスクが大きく異なります。
子宮蓄膿症の場合は、無事に手術を乗り越えられず後遺症が残ったり、最悪の場合亡くなってしまうことがあるので、術式は同じでもとてもハイリスクな手術です。
子宮蓄膿症では、子宮にぱんぱんに膿が溜まっていることが珍しくありません。
ぱんぱんに膿が溜まっている場合、子宮の大きさが通常の何倍も大きくなってしまうので、手術の傷が大きくなってしまいます。
傷が大きくなると、術後の犬の痛みも大きくなり回復が遅くなる要因です。
また、子宮破裂といって子宮に穴が空いて膿が腹腔内に漏れ出てしまっている場合は、子宮卵巣摘出術後に温めた生理食塩水でしっかり洗浄する必要があることもあります。
通常の避妊手術と比べて難易度の高い手術となることがわかりますね。
手術後も、全身にまわってしまった細菌や毒素を早急に無くすために抗菌薬の投与や輸液などを行い、手術による合併症の有無などを確認してから治療終了となります。

走っているハスキー犬

子宮卵巣摘出術を行うタイミングとは

子宮蓄膿症の子宮卵巣摘出術は、なるべく早く行うことが重要です。
症状や検査結果から子宮蓄膿症が強く疑われる場合には、受診時に状態が悪くなくても急激に悪化することもあります。
高齢で発症することの多い子宮蓄膿症で、全身状態が悪くなってしまうと、全身麻酔のリスクが非常に高く最悪の場合亡くなってしまう可能性があります。
そのため、診断されたらなるべく早く手術を行うことでリスクを減らすことが可能です。
全身状態が悪くなってから診断された場合は、少しでも麻酔リスクをさげるため、輸液や昇圧剤などを使用してなるべく早く全身状態を改善させてから手術を行います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は犬の子宮蓄膿症について解説しました。
子宮蓄膿症は治療が緊急手術となるので、飼い主様は動揺されていることが多いです。
受診や治療の判断が遅れることで、愛犬が数日のうちに命を落とす可能性があることを考えると恐ろしいですよね。

少しでも愛犬に不安なことがあればぜひ、当院までご相談ください。