犬の成長板骨折|子犬でよくある骨折について獣医師が解説

犬の成長板骨折|子犬でよくある骨折について獣医師が解説
犬の成長板骨折は、子犬や成長期の若い犬に特有の骨折です。
成長板は腕や脚の骨などに含まれる軟骨の部位で、ここから骨が伸びて成長していきます。
大人になるにつれて成長板は骨に置き換わっていくため、成犬では成長板は見られません。
犬の成長に欠かせない成長板ですが、柔らかく未成熟なため、ジャンプや転倒といった小さな衝撃でも骨折することがあります。
成長板骨折を放置すると、左右で足の長さが違ってしまったり、関節が変形してしまうなど将来的なトラブルにつながる可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要です。
この記事では、犬の成長板骨折についてわかりやすくまとめました。
「成長板骨折って診断されたけどどんな病気かわからない…」
「成長板骨折にならないためにはどうすればいいの?」
そんな飼い主様の疑問にこたえる内容になっていますので、ぜひご一読ください。
犬の成長板骨折とは?
犬の成長板骨折とは、名前の通り「成長板(骨端軟骨板)」と呼ばれる部分が折れてしまった状態のことです。
成長板は子犬の骨の端にあるやわらかい軟骨の層で、ここから骨が長く伸びていきます。
成長板は体の成長に欠かせませんが、ジャンプなどの小さな衝撃でも骨折してしまうほど壊れやすい部位です。
成長板は、小型犬では生後10ヵ月くらいまで、大型犬では1歳過ぎをめどに骨に置き換わってなくなります。
そのため、成長板骨折は成犬ではみられません。
成長板が折れてしまうと、その部分の骨の伸びが止まってしまうことも。
若いうちに骨折するほど骨の成長に影響が出やすく、足が曲がったり、左右の長さが違ってくることで歩行に困る場合もあります。
成長板骨折の原因
犬の成長板骨折は、日常生活の中で起こりやすい骨折です。
主な原因には以下があります。
- ソファや階段、抱っこなどからの落下
- 自転車や車との交通事故
- 激しい運動やジャンプ
特に室内で飼育される小型犬では、フローリングでの転倒や抱っこからの落下が原因になるケースが多いです。
成長板骨折の症状

成長板骨折の症状には、以下のようなものがあります。
- 足を着かずに歩く、片足をかばう
- 足が腫れて熱をもっている
- 歩行が不自然で、ふらつく
- 触るとひどく痛がる
- 動こうとしない
「少し歩き方が変だな」と思ったら、早めに動物病院で診察を受けることが重要です。
成長板骨折の診断方法
成長板骨折は症状のみで診断することはできません。
動物病院ではまず飼い主様からお話を伺い、触診や体のチェックを行ったあと、最終的にはレントゲン検査で成長板骨折かどうかを確認します。
さらに、骨折の具合が複雑なケースや関節への影響をより詳しく調べる必要がある場合は、CTやMRI検査を行うこともあります。
成長板骨折の治療法

犬の成長板骨折には保存療法と手術の2つの方法があります。
成長板は骨の成長に直結する大切な部分です。
骨折をしっかり治さないと脚の変形や歩行トラブルにつながってしまうことも。
成長板骨折が問題なく自然に治ることはほとんどないので、必ず治療を受けましょう。
骨折の程度が軽い場合は保存療法で治療できることもあります。
ただし、多くのケースでは手術によって確実に固定する治療が必要になります。
保存療法
保存療法は、ギプスなどを用いて骨を正しい位置で固定した上で数週間安静に過ごし、骨がくっつくのを待つ方法です。
骨のズレが少ない場合に選ばれます。
ただし、特に子犬の場合は人間のようにじっと安静にしていることが難しく、動いてしまって固定がずれることもあります。
治療期間中はこまめにレントゲンを撮って、きちんと正しい位置で骨がくっついているかを確認することが大切ですね。
手術
手術では、麻酔をかけて骨折した部分をピンやプレートで固定し、成長板を元の位置に戻します。
手術は成長板の損傷が大きい場合やズレが大きい場合に行われる治療法です。
手術後は定期的なレントゲン検査で回復具合を確認します。
最低でも数週間の安静が必要です。
骨が完全にくっついたことを確認した後、再び麻酔をかけてピンやプレートを取り除く必要があります。
成長板骨折の回復期間と日常生活の注意点
犬の成長板骨折の回復期間は、数週間〜数ヵ月が目安です。
個体差もありますが、完全に骨がくっつくまで3ヵ月以上かかる場合もあります。
無理をすると関節に負担がかかり、将来的に歩きにくさや痛みが残ってしまうこともあるため、焦らずじっくり回復させることが大切です。
骨折の治療でまず何よりも大切なことは、ケージで安静を保つことです。
「狭いケージに閉じ込めておくのはかわいそう」と思うかもしれませんが、回復が遅れると関節に悪影響が出てしまいます。
ケージから出してあげたい気持ちをぐっと堪えるのも愛情です。
散歩の再開時期を含め、獣医師の指示に従った生活管理を心がけましょう。
ケージで安静にしている間は知育トイやガムなどで気を紛らわせてあげると安心です。
なお、成長板骨折は一度治っても再発したり、別の脚でも発症したりするため予防管理が重要です。
フローリングには滑り止めマットを敷いたり、段差の上り下りを避けたりすることで再骨折を防ぐことができます。
抱っこするときは折れた方の脚に負担をかけないように支えることも大切です。
まとめ
犬の成長板骨折は子犬や小型犬で多く見られ、ジャンプや落下といった小さな衝撃でも起こってしまいます。
骨折を放置すると、足の長さの違いや関節の変形につながりますが、早期に治療すれば問題なく回復することがほとんどです。
愛犬の歩き方に違和感を覚えたら、早めに動物病院を受診しましょう。
成長板骨折の治療中はケージで安静を保ち、治った後も滑り止めマットの使用や段差の回避で再発を防ぎましょう。
成長板骨折は、見つけたときにしっかり治療とケアをすれば、きちんと回復できるケガです。
成長板骨折やその後のケアについて、不安やわからないことがあれば遠慮なく当院までお尋ねください。