犬の糖尿病性ケトアシドーシスとは|命を脅かすケトアシドーシスについて解説

犬の糖尿病性ケトアシドーシスとは|命を脅かすケトアシドーシスについて解説
犬が糖尿病と診断されたとき、多くの飼い主様は大きな不安を感じると思います。
しかし、糖尿病そのものよりも、さらに恐ろしい状態があることをご存じでしょうか。
それが糖尿病のもっとも重篤な合併症の一つである糖尿病性ケトアシドーシスです。
糖尿病性ケトアシドーシスは適切な治療を受けなければ数時間から数日で命に関わる危険な状態へと進行します。
この記事では糖尿病とケトアシドーシスの関係を詳しく解説します。
犬の飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、ケトアシドーシスを見逃さないようにしましょう。
犬の糖尿病の基礎知識

犬の糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの不足や働きの低下により、血糖値が慢性的に高くなる病気です。
インスリンは血液中のブドウ糖を細胞に取り込む際に必要なホルモンです。
インスリンが正常に機能しないと、体内でエネルギーとして使われるべき糖分が血液中に蓄積してしまいます。
犬の糖尿病は膵臓のβ細胞が破壊されることでインスリンがほとんど分泌されなくなる状態になることが多いです。
これは人間の1型糖尿病と似ており、生涯にわたってインスリン注射による治療が必要となります。
犬の糖尿病は中高齢(7〜9歳以上)で発症することが多く、特にメスに多く見られます。
避妊手術を受けていないメスでは、女性ホルモンの影響で糖尿病のリスクが高まるので注意しましょう。
また、肥満やクッシング症候群などの内分泌疾患を持つ犬もリスクが高いとされています。
犬の糖尿病が悪化して起こるケトアシドーシスとは
ケトアシドーシスとは、この糖尿病が重症化した際に起こる命に関わる緊急事態です。
糖尿病が悪化し、体内のインスリンが極端に不足すると細胞はエネルギー源である糖を血液中から取り込めなくなります。
深刻なエネルギー不足を解消しようと、体は非常事態として蓄えられた脂肪を猛スピードで分解し始めます。
脂肪を分解する際に肝臓で副産物として生成されるのがケトン体という物質です。
ケトン体は少量であればエネルギーとして利用されますが、過剰に蓄積すると血液が強い酸性に傾くアシドーシスを引き起こします。
血液のpHバランスが崩れると、全身の臓器が正常に機能しなくなり、重度の脱水や電解質異常を招くので注意が必要です。
糖尿病が原因でこのような状態に陥ることを糖尿病性ケトアシドーシスと言います。
犬の糖尿病性ケトアシドーシスの症状
糖尿病性ケトアシドーシスの症状は、通常の糖尿病の症状よりも重篤です。
糖尿病性ケトアシドーシスの代表的な症状には以下のようなものがあります。
- 食欲が低下、またはまったく食べなくなる
- 体重が短期間で減少する
- 嘔吐や下痢を繰り返す
- 脱水が進み、皮膚の張りがなくなる
- 呼吸が荒く深くなる(努力呼吸)
- 口や呼気から甘酸っぱいにおい(ケトン臭)がする
- ぐったりして動かなくなる
特に注意が必要なのは、これまで糖尿病の治療を順調に行っていた場合でも、膵炎などを併発することで一気に糖尿病性ケトアシドーシスを発症することがある点です。
「昨日は元気だったから」
という油断は禁物です。
これらの症状が一つでも見られたら、すぐに動物病院を受診してください。
糖尿病性ケトアシドーシスの治療とは
糖尿病からケトアシドーシスを発症してしまった場合は基本的に集中治療を目的とした入院が必要になります。
治療の柱は
- 脱水の改善
- 血糖値のコントロール
- 電解質バランスの補正
の3点です。
ここではそれぞれの治療について詳しく見ていきましょう。
脱水の改善
ケトアシドーシスに陥った犬の体は極度の脱水状態にあります。
高血糖による利尿作用に加え、嘔吐や下痢によって体内の水分が枯渇しているからです。
ケトアシドーシスの治療では十分な量の点滴を行い、脱水を改善させることが重要です。
脱水を改善させることができないと、その後のインスリン治療も安全に進めることができません。
点滴は糖尿病性ケトアシドーシスの際に最優先で行われる治療です。
血糖値のコントロール
血糖値を下げるためのインスリン投与も、ケトアシドーシスの治療では通常の糖尿病治療とは異なります。
ケトアシドーシスの治療では効き目が早く調整しやすい速効型インスリンを使用します。
速攻型インスリンを点滴に混ぜて持続的に投与することで、刻一刻と変わる血糖値に即座に対応することが可能です。
急激に血糖値を下げすぎると、脳の細胞が周囲の水分を吸って腫れてしまう脳浮腫という致命的な合併症を引き起こします。
そのため、こまめに血糖値をモニタリングし、インスリンの量を調節することが大切です。
電解質の補正
ケトアシドーシスでは体内のミネラルバランスが崩れています。
特にカリウムやリンの変動は命に直結することが多いので注意が必要です。
インスリン治療を開始すると、血液中のカリウムやリンが急激に細胞内へ移動し、深刻な低カリウム血症から心停止を招くことがあります。
ケトアシドーシスの治療ではインスリン治療を行いながら、ミネラルバランスを調節することが大切です。
犬の糖尿病性ケトアシドーシスを予防するためにできること
糖尿病性ケトアシドーシスを防ぐ最大のポイントは、日常の糖尿病管理を安定させることです。
インスリン注射は必ず獣医師の指示どおり、決められた量と時間を守って行い、自己判断で中止や増減をしないことが重要です。
また、食事内容や食事時間を一定に保つことで血糖値の変動を抑えることができます。
さらに、
「少し元気がない」
「食べる量が減った」
といった小さな体調変化を軽視しない姿勢がとても大切です。
特に、食事をほとんど食べていない状態でインスリン注射をどうすべきか迷った場合は自己判断せず、必ず動物病院に相談してください。
定期的な健康チェックと異変を感じた際の早めの受診が重篤な合併症を防ぐための確実な方法です。
まとめ
犬の糖尿病性ケトアシドーシスは糖尿病の延長線上に起こる命に関わる緊急疾患です。
初期症状は分かりにくく、気づいた時には重症化していることも少なくありません。
糖尿病性ケトアシドーシスは日頃から安定した糖尿病管理を行い、小さな体調変化を見逃さなければ、多くの場合は予防や早期対応が可能です。
当院では犬の糖尿病やケトアシドーシスの治療に積極的に取り組んでいます。
愛犬の異変を感じたときは、遠慮せずにご相談ください。