犬の最期をどう過ごす?犬のターミナルケアと栄養管理について解説

犬の最期をどう過ごす?犬のターミナルケアと栄養管理について解説
愛犬をお家に迎えてから一緒に過ごしてきた時間はかけがえのないものですよね。
そんな愛犬の最期は「できるだけ快適に過ごしてほしい」と願う飼い主様は多いと思います。
高齢や重い病気を抱えて寿命が限られている犬が、残された時間を穏やかに過ごせるように行う医療やケアを「ターミナルケア」と呼びます。
ターミナルケアにおいては、犬の体力や症状に応じた「栄養管理」や「給餌方法」がとても重要です。
今回は犬のターミナルケアにおける栄養管理について解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、愛犬の最期を少しでも快適に過ごせるよう参考にしてみてください。
犬のターミナルケアの基本的な考え方
犬のターミナルケアでは今まで行われていた「治す医療」から「支える医療」に切り替わります。
犬のターミナルケアは延命だけでなく、生活の質を守ることが目的です。
そのため犬のターミナルケアでは次のことを中心に考えます。
- 痛みや不快感を減らすこと
- 飼い主様との時間を大切にすること
- 犬自身が「その子らしく」過ごせること
犬の生活の質を守るために薬による痛みのコントロールや介護環境の工夫に加えて、食べる楽しみを守ることがとても大切です。
犬のターミナル期に起こりやすい栄養上の問題
高齢や病気により寿命が限られている時期を「ターミナル期」といいます。
この時期には次のような変化がよく見られます。
- 食欲が落ちる、食事に興味を示さなくなる
- 食べ物や水を飲み込むのが難しくなる
- 消化機能が低下し、下痢や嘔吐をしやすくなる
- 筋肉量が減り、体重が落ちる
- 臓器の病気により、特定の栄養素を制限する必要が出る
このような変化に合わせて栄養管理を工夫することが、犬のターミナルケアにおける大きな役割です。
栄養学的な配慮
その子の状態によって必要な栄養や不足してしまう栄養はさまざまです。
犬のターミナルケアで配慮すべきポイントについてそれぞれ解説していきます。
エネルギー確保
ターミナル期の犬はフードを食べられる量が限られるため、少量でも高カロリーな食事が推奨されます。
犬がフードを食べられないときは次のようなものを組み合わせると効果的です。
- 高脂肪フード
- 嗜好性の高いトリーツ
- ペースト状の療法食
嗜好性の高い食べ物には脂質が多く含まれていることがあります。
脂質は重要なエネルギー源ですが、摂取しすぎると犬がお腹を壊してしまうこともあります。
ターミナル期ではどんなフードがベストなのかはその子の状態によってさまざまです。
その子の状態にあったフードはどれなのか動物病院に相談しましょう。
タンパク質の質
タンパク質は筋肉や臓器を作る重要な材料です。
そのためターミナル期の犬には体を維持するために良質なタンパク質が必要になります。
良質なタンパク質とは、犬に必要なアミノ酸を含み、消化吸収されやすいタンパク質のことですね。
タンパク質を制限しなければいけないケースもあります。
年齢を重ねて発症する腎臓病や肝臓病などではタンパク質の代謝機能が低下してしまいます。
これらの病気がある犬は獣医師の指示に従いタンパク質の調整が必要です。
消化吸収のサポート
ターミナル期では犬の消化機能が落ちてしまい、十分な栄養を吸収できないことがあります。
十分な栄養を吸収するためにも、犬が消化吸収をできるフードや状態にすることが重要です。
下痢や便秘など犬の消化機能が落ちている場合には、消化しやすいフードや消化酵素の補助を利用することもあります。
犬の消化機能をサポートする薬もあるので、犬に下痢や便秘などの症状がある場合は動物病院に相談しましょう。
水分補給
十分な水分補給は犬の全身状態を良好に保つために必要です。
状態が悪い犬は水を飲みに行くのをためらってしまうこともあります。
フードをふやかす・スープをかけるなどして自然に犬が水分を摂れる工夫が大切です。
十分な水分補給が難しい場合は動物病院や自宅で点滴を行うこともあります。
点滴の必要性も含めて犬の脱水状態を動物病院で確認してもらいましょう。

給餌方法の工夫
栄養学的に適した食事でも、実際に犬が食べられなければ意味がないですよね。
犬のターミナルケアでは給餌方法の工夫も重要な役割になります。
給餌方法の工夫についていくつかご紹介していきます。
食事形態の調整
ターミナル期の犬は噛む力や消化機能が低下してしまいます。
犬が食べやすい・消化吸収しやすい形にして食べさせてあげることも大切です。
食事形態の工夫として次のようなものがあります。
- ドライフード → ふやかして柔らかくする
- ウェットフード → ペースト状にして飲み込みやすくする
- 手作り食→ 茹でたささみや白身魚を細かくほぐす
どの食事形態が食べやすいかはその子の状態によってさまざまです。
今まで食べてきたフードを中心に色々なフードを試してみましょう。
嗜好性を高める工夫
犬が自分から食べたいと思う気持ちはとても大事ですよね。
犬にとって匂いは食欲を刺激する重要な要素です。
ふやかしたドライフードやウェットフードなどは温めることで香りが立ち、犬の「食べたい気持ち」を引き出します。
その子の好物をトッピングとして混ぜてあげることも大事ですね。
犬のお腹の調子に注意しながら、嗜好性を高める工夫をしていきましょう。
強制給餌
犬が自分からフードを食べなくなった場合に強制給餌が行われることがあります。
強制給餌とはシリンジなどで犬の口にフードを入れる方法です。
食べたくないのにフードを強制的に口に入れることが犬にとってストレスになってしまうことがあります。
犬の状態によっては必要な場合もありますが、犬の負担を考慮して選択することが重要です。
経管栄養
犬が口からフードを摂取するのが難しい場合、経管栄養を使った栄養管理が行われることもあります。
経管栄養とは体外から消化管にチューブを設置して、チューブを通して給餌を行う方法です。
チューブを設置する際に犬に負担がかかりますが、チューブ設置後は犬にストレスなく給餌を行えます。
その子にとってベストな給餌方法を選択することが大切です。

まとめ
犬のターミナルケアは、その子が最期まで心地よく過ごせるように支えることを目的とした治療です。
ターミナル期の栄養管理や給餌方法は、飼い主様の工夫と動物病院のサポートが大きな力になります。
特に犬の食事は毎回のことなので飼い主様が疲れてしまうこともあります。
犬も飼い主様も無理のない範囲で最期を一緒に過ごして行くことが大切です。
当院では犬のターミナルケアにも力を入れています。
大切な愛犬にどんな最期を過ごしてほしいか一緒に考えていきます。
犬のターミナルケアで悩んでいることがあれば、気軽にご相談ください。